利用者さんとの距離のとり方

人間同士の適切な距離というのは、状況によって変わってきます。特に日本人は知らない人が近寄ってくるのを嫌がりますが、身体の弱ってきた高齢者や認知症で警戒心の強くなった高齢者は、とりわけその傾向が強くなります。

こうした実情を踏まえると、介護施設で働くスタッフは利用者さんとの距離感に十分気をつける必要があるといえます。介護の現場で元気に話しかけるのはよいのですが、まだ慣れ親しんでいないうちに、いきなり距離を縮めると警戒されてしまうので要注意です。

もし介護をする人が高齢者より背が高い場合、特に男性の介護者の場合は、手を伸ばせば触れられる距離に入ったなら、さり気なく腰をかがめるようにしましょう。

また、相手を安心させるためには、お年寄りの目より自分の目が低くなるようにしてアプローチしていくことが大切です。車椅子に坐っている人とコミュニケーションを取る場合は、片膝をつくなどしてしっかりしゃがんで対応するようにしましょう。

こうした話しかける距離の遠近を利用して、伝達にメリハリをつけることも可能です。一つの例として、「ご飯ですよ」「お風呂ですよ」など日常的な分かりやすい声かけは、ちょっと離れたところから大きめの声で呼びかけるというやり方があります。

大きめの声でちょっと距離をおいて話しかけることで、施設全体の決まり事というイメージを抱かせるのです。このように、大きな声で広い空間に声を満たすことで、お年寄りに家族や他者との結びつきを感じてもらうこともできます。

介護士という仕事を長く続けるための秘訣は、「利用者さんと仲良くなること」だといっても過言ではありません。利用者さんとの信頼関係はやりがいに直結します。仕事に対するモチベーションを上げるという意味でも、人間関係を良好に保つ心がけは非常に重要なポイントです。

また、一言に介護といっても職種はさまざまあり、仕事内容はもちろん人との関わり方も変わってきます。現場でのやりがいがある分、きつい面も当然でてくるでしょう。そんな中でも仕事を続けていくためには、モチベーションの基盤となる自分のやりがいをハッキリとさせておくことが大事です。もし介護業界に興味を抱いている方は、お年寄りを支えるやりがいについてじっくりと熟考しておいた方がいいでしょう。